北の国ノルウェーの、ベルゲンという古い町のはずれにある大きな森の女王は、極北のラップランドで三日三晩続いた恒例の森の女王たちの祭典から、ご機嫌うるわしく森に帰ってきました。 　三日三晩とは言っても短い夏のこととて、夜になるべき時刻になっても日は沈みません。女王たちはほとんど眠ることもなく、歌い、踊り、笑い、語り続けたのです。 　それでも疲れを覚えることなく、ご機嫌うるわしく帰ってきたというわけは、かねてから女王は、この国の人間たちにいまなお愛され続けているグリーグという男が作った「ソルヴェイグの歌」がいたくお気に召していたのですが、ついに今年は祭典の席上で歌ったのです。 　いつもは控えめな女王がみずから舞台に立ったものですから、一同ヤンヤヤンヤの喝采で、女王は大いに面目をほどこしたのでした。